PCベンチマークで分かる本当の実力!<br>購入前に確認すべきポイント

パソコンを買うとき、カタログに書かれたスペックだけでは本当の性能が分かりにくいですよね。CPUの型番やメモリの容量を見ても、実際の使い心地がどうなのか想像しづらいものです。そんなとき役立つのがベンチマークです。この記事では、PCベンチマークの基本から活用法まで、分かりやすく解説します。あなたの用途に合った最適なパソコン選びができるよう、購入前に確認すべきポイントをご紹介します。

PCベンチマークの基本

PCベンチマークとは、パソコンの性能を数値化して測定する方法です。車で言えば「馬力」や「加速性能」のように、パソコンの処理能力を客観的な数字で表してくれます。

例えば、「このパソコンは動画編集が得意」「あのパソコンはゲームに向いている」といった性能の違いを、具体的な数値で比較できるようにするためのものです。スペック表だけでは見えてこない「実際の使用感」を知るための指標として多くの人に活用されています。

ベンチマークスコアを確認することで、自分の予算と必要な性能のバランスを見極めることができます。高すぎるスペックのPCを買って無駄な出費をすることも、低すぎるスペックのPCを買って使いものにならないということも避けられるわけです。

カタログスペックだけでは不十分な理由

パソコンのカタログには「Core i7プロセッサ」「16GBメモリ」などの情報が記載されていますが、同じ型番や数値でも実際の性能には差があることが少なくありません。以下のような例となります。

  • 同じCPUでも、冷却性能の違いで実力が変わる
  • グラフィックボードの性能は同じ系列でも世代によって大きく異なる
  • ストレージは同じSSDでも、接続方式や内部構造で速度が違う

ベンチマークテストでは、これらの部品が実際に動作したときの性能を測定するため、カタログだけでは分からない「本当の実力」が分かるのです。

主要なPCベンチマークツールと測定項目

パソコンの性能を測るベンチマークツールはいくつもありますが、それぞれ測定する項目や得意分野が異なります。ここでは代表的なツールと、それぞれが測定する項目について解説します。

CPUベンチマーク:Cinebenchの見方

CPUの性能測定でよく使われるのが「Cinebench」です。3DCGレンダリングの処理速度を測定することで、CPUの処理能力を数値化してくれます。

Cinebenchには主に2つの測定モードがあります。

  • シングルコアスコア:1つのコアの処理性能を測定
  • マルチコアスコア:すべてのコアを使った総合的な処理性能を測定

例えば、ウェブの閲覧や文書作成など軽い作業が多い場合はシングルコアスコアが重要です。一方、動画編集や3D作業など重い処理をする場合は、マルチコアスコアが高いCPUを選ぶと作業がスムーズになります。

用途に合わせた適切なスコアを確認することで、必要十分なCPUを選べますよ。一般的な目安として、オフィス作業ならCinebench R23でシングルコア1000以上、クリエイティブ作業なら同マルチコア10000以上あると快適に使えます。

グラフィック性能:3DMarkの活用法

グラフィック性能の測定には「3DMark」が広く使われています。3Dグラフィックの描画性能を様々な角度から測定できるツールです。

3DMarkには複数のテストが用意されていて、それぞれ異なる負荷をかけて測定します。

  • Time Spy:DirectX 12対応の高負荷テスト(最新ゲーム向け)
  • Fire Strike:DirectX 11対応のミドルクラステスト
  • Night Raid:軽量グラフィック向けテスト(ノートPCなど)

ゲームをプレイしたい場合は、プレイしたいゲームのジャンルや要求スペックに近いテスト結果を参考にするといいでしょう。例えば、最新の3Dゲームを快適にプレイしたいなら、Time Spyのスコアが7000以上あると安心です。

総合性能:PCMarkで日常使用の快適さを測定

「PCMark」は、日常的な作業の総合的なパフォーマンスを測定するベンチマークです。ウェブの閲覧、オフィス作業、写真編集など実際の使用シーンを想定したテストを行います。

PCMarkのスコアが高ければ、日常的な作業が快適に行えるパソコンと言えます。PCMark 10では、以下のようなテスト項目があります。

  • 基本操作(ウェブの閲覧、アプリ起動など)
  • 生産性(オフィス作業、表計算など)
  • デジタルコンテンツ制作(写真編集、動画編集など)

一般的な目安として、PCMark 10で4000点以上あれば一般的なオフィス作業に、6000点以上あれば軽い動画編集にも対応できると考えられます。自分の主な使用目的に合ったテスト結果を重視することで、実際の使用感に近い性能評価ができます。

ストレージ速度:CrystalDiskMarkの読み方

「CrystalDiskMark」は、ハードディスクやSSDなどのストレージ速度を測定するためのツールです。読み込み速度と書き込み速度を数値化してくれます。

主な測定項目は以下の通りです。

  • シーケンシャルリード/ライト:大きなファイルを連続して読み書きする速度
  • ランダムリード/ライト:小さなファイルをランダムに読み書きする速度

OSや頻繁に使うアプリケーションを素早く起動したい場合は、ランダムリード/ライトの速度が重要です。一方、大きな動画ファイルなどを扱う場合は、シーケンシャルリード/ライトの速度が作業効率に影響します。

一般的なSATAのSSDなら、シーケンシャルリードで500MB/s以上、NVMe SSDなら2000MB/s以上あれば十分な速さと言えるでしょう。

用途別に見るPCベンチマークの目安

パソコンの用途によって必要な性能は大きく異なります。ここでは、主な用途別に、どのくらいのベンチマークスコアがあれば快適に使えるのか、目安を紹介します。

オフィス作業・ウェブ閲覧向けの必要スコア

文書作成やウェブ閲覧、表計算などの一般的なオフィス作業が中心の場合は、高性能なPCは必要ありません。以下のようなスコアがあれば十分です。

  • Cinebench R23:シングルコア900以上
  • PCMark 10:4000点以上
  • ストレージ:シーケンシャルリード300MB/s以上

この程度のスペックがあれば、Microsoft OfficeやGoogle ドキュメント、メールやウェブの閲覧などの基本的な作業をストレスなく行えます。コストパフォーマンスを重視するなら、このレベルのマシンで十分でしょう。

動画編集・クリエイティブ作業に必要な性能

動画編集や写真加工、イラスト制作などのクリエイティブな作業をする場合は、より高いスペックが求められます。

  • Cinebench R23:マルチコア10000以上
  • 3DMark Time Spy:4000以上
  • PCMark 10:6000点以上
  • ストレージ:シーケンシャルリード1500MB/s以上

特に動画編集では、CPUのマルチコア性能とストレージの速度が作業効率に大きく影響します。4K動画などの高解像度素材を扱う場合は、上記の数値よりさらに高い性能が必要になることもあるでしょう。

また、Adobe PremiereやPhotoshopなどのソフトウェアはGPU性能も活用するため、総合的にバランスの取れた構成を選ぶことが大切です。

ゲーム用PCの選び方とベンチマーク指標

ゲーム用のPCを選ぶ場合は、特にグラフィック性能(GPU)が重要になります。プレイしたいゲームによって必要なスペックは異なりますが、一般的な目安は以下の通りです。

  • エントリークラス(軽いゲーム向け):
    • 3DMark Time Spy:3000前後
    • Cinebench R23:シングルコア1200以上
  • ミドルクラス(一般的な3Dゲーム向け):
    • 3DMark Time Spy:6000〜8000
    • Cinebench R23:シングルコア1500以上
  • ハイエンドクラス(最新AAA級ゲーム向け):
    • 3DMark Time Spy:10000以上
    • Cinebench R23:シングルコア1700以上

ゲームの場合、GPU性能と合わせてCPUのシングルコア性能も重要です。好きなゲームの推奨スペックをベンチマークスコアに変換して確認すると、より適切な判断ができますよ。

自分のPCのベンチマークを測定する方法

すでに持っているパソコンの性能を知りたい場合や、新しく購入したパソコンが期待通りの性能を発揮しているか確認したい場合は、自分でベンチマークテストを行うことができます。ここでは、代表的なツールの入手方法と使い方を紹介します。

無料で使えるベンチマークソフト

無料で使えるベンチマークソフトには以下のようなものがあります。

  • Cinebench:CPU性能の測定に特化
  • CrystalDiskMark:ストレージの速度測定
  • Heaven Benchmark:グラフィック性能測定
  • UserBenchmark:PC全体の性能を簡易測定

これらは公式サイトや信頼できるダウンロードサイトから無料で入手できます。定期的に性能測定を行って経年変化を確認すると、パソコンのメンテナンス時期の目安にもなります。

例えば、ある日突然パソコンの動作が遅くなったと感じたら、ベンチマークを取って以前の結果と比較することで、どの部分の性能が低下しているのかを特定できます。

ベンチマーク測定時の注意点

ベンチマークを測定する際は、以下の点に注意しましょう。

  • 他のアプリケーションはすべて終了する
  • バックグラウンドで動作しているアプリ(ウイルス対策ソフトなど)も可能な限り終了する
  • 電源プランは「高パフォーマンス」に設定する
  • ノートPCの場合は電源に接続した状態で測定する
  • PCが熱くなっていない状態(起動してしばらく経った安定した状態)で測定する

特にノートパソコンでは、バッテリー駆動時と電源接続時で性能が大きく変わる場合があります。また、PCが熱くなっていると性能が制限される「サーマルスロットリング」が働くこともあるため、測定環境を一定に保つことが重要です。

ベンチマークスコアの比較方法と活用のコツ

ベンチマークスコアを見るときのポイントや、実際の購入判断にどう活かすかについて解説します。単に数値を比較するだけでなく、自分の使い方に合わせた評価ができるようになりましょう。

スコアの見方と価格とのバランス

ベンチマークスコアは高ければ高いほど良いというわけではありません。大切なのは価格とのバランスです。以下のような例となります。

  • スコアが1.2倍でも価格が2倍なら、コストパフォーマンスは悪い
  • 少し古い世代の製品でも、最新モデルの80%の性能で50%の価格なら魅力的である
  • 自分の使用目的に必要十分なスコアを超えた部分は「余剰性能」になる可能性がある

性能と価格の比率(コストパフォーマンス)を重視することで、無駄な出費を避けられます。例えば、オフィス作業が主な用途なのに、高額なゲーミングPC並みの性能は必要ないでしょう。

性能比較サイトの上手な活用法

インターネット上には、様々なPCパーツの性能を比較できるサイトがあります。これらを活用することで、自分が検討している製品の位置づけが分かりやすくなります。

代表的な比較サイトには以下のようなものがあります。

  • PassMark Software - CPU性能比較
  • UserBenchmark - 様々なパーツの比較
  • 3DMark Result Browser - グラフィック性能の比較

これらのサイトでは、製品名や型番を入力するだけで、似た性能の製品や価格帯の異なる製品との比較が簡単にできます。複数の比較サイトを確認して総合的に判断すると、より信頼性の高い情報が得られますよ。

用途別おすすめPCの選び方

実際のPC選びでは、ベンチマークスコアだけでなく総合的な判断が必要です。ここでは、主な用途別に、何を重視すべきかをご紹介します。

ビジネス・在宅ワーク向けPC選びのポイント

ビジネスや在宅ワークに使うパソコンを選ぶ際は、以下のポイントを重視しましょう。

  • 安定性と信頼性(長時間使用しても安定して動作すること)
  • バッテリー持続時間(ノートPCの場合)
  • キーボードの打ちやすさと画面の見やすさ
  • Web会議に対応できるカメラとマイクの性能

ベンチマークでは、以下の項目をチェックするとよいでしょう。

  • PCMark 10のProductivityスコア(生産性テスト)
  • CPU:Cinebenchのシングルコアスコア
  • メモリ:最低8GB、推奨16GB
  • ストレージ:SSDでシーケンシャルリード500MB/s以上

リモートワークでは、Web会議ツールの動作やマルチタスクの快適さが重要です。実際の作業に近い環境でのベンチマーク結果を参考にすると、より実用的な判断ができますよ。

動画編集・デザイナー向けの重視すべき指標

クリエイティブな作業をする方が重視すべき指標は以下の通りです。

  • CPU:Cinebenchのマルチコアスコア(レンダリング性能)
  • GPU:OpenCLやCUDAのスコア(GPUレンダリング性能)
  • メモリ:32GB以上
  • ストレージ:NVMe SSDで3000MB/s以上の読み書き速度
  • ディスプレイ:色域の広さと解像度

特に4K動画編集やリアルタイムで描画を行う場合は、これらの性能が作業効率を大きく左右します。実際に使用するソフトウェアに特化したベンチマークを確認すると、より正確な性能予測ができます。例えば、Adobe PremiereにはPugetBenchというベンチマークがあります。

ゲーマー向けPC性能の見極め方

ゲーミングPCを選ぶ際のポイントは以下の通りです。

  • GPU:3DMarkのスコア(特にプレイしたいゲームに近いテスト結果)
  • CPU:Cinebenchのシングルコアスコア(多くのゲームはシングルコア性能に依存)
  • メモリ:16GB以上、高速なもの(DDR4-3200以上)
  • ストレージ:ゲームの読み込み時間を短縮するためのNVMe SSD
  • 冷却性能:長時間プレイでも安定した性能の維持

プレイしたいゲームのジャンルやタイトルによって、必要な性能は大きく異なります。好きなゲームの実際のフレームレート測定結果を参考にすることで、より具体的な判断ができます。YouTubeなどでは、特定のゲームと特定のPCの組み合わせでのパフォーマンス動画が多数公開されています。

ベンチマークだけでは分からないPC選びの注意点

ベンチマークスコアは重要な指標ですが、それだけではパソコンの価値を完全に判断することはできません。ここでは、ベンチマーク以外に注目すべきポイントについて解説します。

冷却性能とノイズレベルの重要性

高性能なCPUやGPUは、高い熱を発生させます。この熱を適切に排出できないと、性能が低下したり、最悪の場合は故障の原因になったりします。

特にノートPCでは、薄型で見た目が良いモデルほど冷却性能に問題があるケースがあります。長時間の負荷時の温度やファンノイズをレビューで確認することが大切です。

例えば、ベンチマークスコアが同じでも、一方は静かに動作し、もう一方は大きなファンノイズを出す場合があります。オフィスや自宅で静かな環境を好む方は、この点も重視すべきでしょう。

拡張性と耐久性の見極め方

将来的なアップグレードを考えるなら、拡張性も重要なポイントです。以下のような点をチェックしましょう。

  • メモリスロットの空き状況と最大対応容量
  • ストレージの増設可能スロット(M.2、2.5インチベイなど)
  • グラフィックカードの交換可能性(デスクトップPCの場合)
  • 電源ユニットの余力(将来的な拡張に耐えられるか)

また、ビジネスノートPCなどは一般消費者向けモデルより頑丈に作られていることが多く、長期間使用する予定なら耐久性テストの結果や保証期間を確認することも大切です。

実際の使用感を確認する方法

最終的には、数値だけでなく実際の使用感が重要です。可能であれば、以下の方法で実機を確認しましょう。

  • 家電量販店での展示機を操作してみる
  • 友人や知人の同じモデルを借りて試してみる
  • 実機レビュー動画をYouTubeなどで確認する
  • 返品可能なショップで購入し、自分の作業環境で試してみる

特にキーボードの打ち心地やディスプレイの見やすさ、持ち運びのしやすさなどは、数値だけでは分からない部分です。自分の目と手で確かめることを最優先すると、後悔の少ない選択ができますよ。

まとめ

PCベンチマークは、パソコンの本当の実力を知るための重要な指標です。カタログスペックだけでは分からない実際の性能を数値化することで、自分の用途に合った最適なパソコン選びをサポートしてくれます。

用途別に適切なベンチマークスコアを確認し、価格とのバランスを考慮することで、コストパフォーマンスの高いPC選びができます。ただし、ベンチマークだけでなく、冷却性能や拡張性、実際の使用感なども総合的に判断することが大切です。

この記事で紹介したポイントを参考に、あなたの用途や予算に最適なパソコンを見つけてください。適切な性能のパソコンは、長く快適に使い続けることができ、結果的に満足度の高い選択になるはずです。

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